薬剤を選択するとグラフが表示されます
出典: 厚生労働省 薬価基準収載品目一覧
| グラフ |
比較 |
製品名 |
製造会社 |
薬価 |
前回比 |
添付文書 |
| 薬剤を検索して選択してください |
⚠️ 2026年4月改定値。掲載情報は公式情報と照合のうえご利用ください。次回改定: 2027年4月予定。
🏭 会社別薬価一覧
厚生労働省 2026年4月改定・5月BS随時収載対応
運営者情報
| サービス名 |
薬価ラボ(YakkaLab) |
| 運営者 |
yakka.lover |
| 所在地 |
東京都 |
| 属性 |
ヘルスケアコンサルティングファーム勤務 |
| 運営開始 |
2026年4月 |
| 連絡先 |
yakkalover@gmail.com
/ GitHub Issues
|
| 本サービスの目的 |
薬価情報は国民皆保険制度の根幹をなす重要な公共情報であるにもかかわらず、調べにくい状態が続いています。
本サービスは、薬剤師・医療従事者・製薬企業の方々が薬価データをすばやく・わかりやすく活用できるよう、
個人で開発・運営している無料の薬価データベースです。
|
データ出典について:本サービスに掲載する薬価データは、
厚生労働省 薬価基準収載医薬品コード一覧
を基に整理・データベース化したものです。運営者はデータの正確性維持に努めますが、
最新情報の確認は必ず公式資料をご参照ください。
薬価の基礎知識
薬価改定の仕組み
— いつ・誰が・どうやって決まるのか
最終更新:2026年5月 | 参考:厚生労働省・中医協公開資料
① 薬価改定とは?
日本では、健康保険が適用されるすべての医薬品には国が定めた公定価格「薬価(やっか)」が設定されています。この薬価を見直す作業が薬価改定です。
薬価は市場で実際に取引される価格(市場実勢価格)よりも高く設定されることが多く、その差(乖離率)が一定以上になると引き下げが行われます。これは医療費の適正化と、製薬企業の適正利潤確保のバランスをとるための仕組みです。
💡 ポイント
- 薬価は国が定めた公定価格。病院・薬局はこれ以上の価格で患者に請求できない
- 製薬企業は薬局・病院に薬価より安く販売するため、差額(乖離)が生じる
- 改定では乖離を縮小するため、基本的に薬価は下がる方向になる
② 誰が決めるのか(中医協の役割)
薬価は中央社会保険医療協議会(中医協/ちゅういきょう)が審議し、厚生労働大臣が告示することで決定されます。
🏥
支払側(7名)
健保連・経団連など
保険料を払う側
⚕️
診療側(7名)
日本医師会・日本薬剤師会など
医療を提供する側
🎓
公益委員(6名)
学者・有識者
中立的立場で調整
中医協の薬価専門部会・薬価算定組織が実務を担い、個別品目の薬価算定→薬価専門部会の審議→中医協総会の答申→厚労大臣告示、という流れで決定されます。
③ 改定スケジュール
2021年度から毎年薬価改定が実施されています。ただし偶数年の「本改定」と奇数年の「中間年改定」では対象範囲が異なります。
| 種類 |
対象 |
適用月 |
規模 |
| 本改定(偶数年) |
全収載品目 |
4月 |
大きい(数千品目が対象) |
| 中間年改定(奇数年) |
乖離率が大きい品目 |
4月 |
絞り込み(乖離率5〜8%超の品目) |
| 随時収載(毎年) |
後発品・新規収載品 |
6月・10月(目安) |
個別品目の追加収載 |
承認と収載の違い:PMDAによる「承認」はあくまで安全性・有効性の審査。「薬価収載」はその後約60〜90日後に薬価が決定されて初めてDB・保険の対象になります。
④ 2016〜2026年の改定率の推移
近年の改定では、後発品の普及拡大・不採算品対策・イノベーション評価という3つの方向性が同時に議論されています。
| 改定年 |
種別 |
主なトピック |
| 2016年(H28) |
本改定 |
後発品使用促進、長期収載品の段階的引き下げ開始 |
| 2018年(H30) |
本改定 |
費用対効果評価の本格導入、新薬創出加算の見直し |
| 2019年(R元) |
消費税改定 |
消費税率8→10%に伴う薬価引き上げ(10月) |
| 2020年(R2) |
中間年(試行) |
毎年改定の試行実施。対象は乖離率が大きい品目 |
| 2021年(R3) |
中間年 |
毎年薬価改定が制度化。コロナ禍での特例的対応も議論 |
| 2022年(R4) |
本改定 |
不採算品再算定の拡充、後発品の不採算解消 |
| 2023年(R5) |
中間年 |
後発品の安定供給問題が顕在化。業界再編の議論 |
| 2024年(R6) |
本改定 |
後発品安定供給対策・診療報酬改定との一体改革 |
| 2025年(R7) |
中間年 |
不採算品再算定を拡大。対象品目数が過去最多 |
| 2026年(R8)🔴 最新 |
本改定 |
イノベーション評価の強化、後発品収載ルールの見直し |
⑤ 薬価はどうやって計算されるのか
新薬の薬価は類似薬効比較方式または原価計算方式のいずれかで算定されます。
類似薬効比較方式
すでに薬価収載されている類似薬を「比較薬」として選び、その薬価を基準に補正して算定。
約8割の新薬がこの方式。
原価計算方式
製造原価・開発費・利益率などを積み上げて算定。比較できる類似薬がない画期的新薬に使われる。
後発品(ジェネリック)の薬価は、先発品の50〜60%を基準に設定されます。後発品が多く収載されるほど、段階的に価格が引き下げられる仕組みがあります。
この記事をシェア
📊 実際の薬価を調べてみましょう
薬価ラボでは2016〜2026年の10回分の改定データを収録。
特定の薬の値下がり幅や、後発品との価格差をグラフで確認できます。
関連する解説ページ(準備中)
後発品(ジェネリック)はなぜ安いのか
先発品との価格差・品質の違い・切り替え方
近日公開
不採算品再算定とは
原価割れになった薬の価格が引き上げられる仕組み
近日公開
薬価算定の深層
アムシェプリ薬価5,531万円はなぜこの価格か
——2019年の設計図から読む
公開:2026年5月 | データソース:中医協議事録(薬価ラボ独自データベース)・厚生労働省公開資料
2026年5月20日、iPS細胞由来心筋細胞シート「アムシェプリ(ラグネプロセル)」が薬価収載された。収載価格は1枚あたり55,312,131円(約5,531万円)。国内最高水準の薬価は「革新的な再生医療だから」という説明だけでは十分でない。価格の論理は2019年の中医協議事録に書かれていた。
この記事の結論
- アムシェプリの薬価算定には原価計算方式が適用され、製品総原価に営業利益・流通経費・消費税・補正加算が積み上げられた
- 条件付き承認品目のため、営業利益率が通常の50%に減額——このルールは2019年の中医協で設計された
- 先駆加算(+10%)と市場性加算Ⅰ(+10%)が適用され、最終薬価を押し上げた
アムシェプリとは
アムシェプリは、他家iPS細胞から作製した心筋細胞シートを用いる再生医療等製品(生物由来製品)。適応は虚血性心疾患による重症心不全で、大阪大学発のスタートアップ「クオリプス株式会社」が製造・販売する。
薬事承認は2024年9月、条件・期限付き承認(有効期間7年・2033年まで)。有効性が「確認」ではなく「推定」の段階での承認であり、この法的位置づけが薬価算定に直接影響した。
原価計算方式と補正加算の仕組み
アムシェプリのように比較対照となる既存薬がない新規作用機序の薬剤には、原価計算方式が適用される。製品総原価(原材料費・労務費・製造経費・一般管理販売費)に、以下を積み上げて薬価を算出する。
| 項目 |
適用・率 |
備考 |
| 製品総原価 |
非公開 |
企業秘密として原価の内訳は公表されない |
| 営業利益 |
業界平均率 × 0.5 |
条件付き承認のため半減(2019年ルール) |
| 流通経費 |
6.9% |
薬価算定上の標準的な流通費率 |
| 消費税 |
10% |
|
| 先駆加算 |
+10% |
先駆的医薬品指定(世界初・国内最初) |
| 市場性加算Ⅰ |
+10% |
対象患者数が極めて少ない希少疾患 |
※ 製品総原価の内訳は中医協の審議でも非公開扱い。加算率は中医協 総-11-4(2026年4月8日)より。
2019年の設計図——条件付き承認ルールの起源
アムシェプリに適用された「営業利益率×0.5」ルールは、2026年に突然決まったものではない。薬価ラボが収録する中医協議事録全文データベースを検索すると、このルールの起源が2019年の議論にあることが確認できる。
中医協 薬価専門部会 第153回(2019年6月)議事録
条件付き承認の品目については、承認審査における有効性・安全性の不確実性を踏まえ、原価計算方式を適用する場合の営業利益率を通常の50%とする方向で議論が進められた。
出典:薬価ラボ独自データベース(中医協議事録全文収録)より取得
中医協 薬価専門部会 第155回(2019年9月)議事録
条件付き承認制度の対象品目に対し、有効性が推定段階にあることを考慮した薬価算定の在り方として、再生医療等製品を含む先駆的製品への算定ルールの整合性が確認された。
出典:薬価ラボ独自データベース(中医協議事録全文収録)より取得
中医協 薬価専門部会 第163回(2019年12月)議事録
条件付き承認品目について、営業利益率を通常の50%に設定する算定ルールを2020年度薬価算定基準に正式に盛り込む方針が確認された。これにより、条件付き承認を受けた再生医療等製品の薬価算定における取り扱いが明確化された。
出典:薬価ラボ独自データベース(中医協議事録全文収録)より取得
この2019年の議論が、2024年に承認されたアムシェプリの2026年薬価収載に直接適用された。価格の「設計図」は7年前に書かれていたのである。
2026年4月——設計図の適用
2026年4月8日の中医協総会(第598回)では、アムシェプリの薬価算定が審議された。公開資料(中医協 総-11-4、総-11-2)から確認できる算定の骨格は以下の通りだ。
中医協 総-11-4(2026年4月8日)
算定方式:原価計算方式。補正加算:先駆加算(加算率10%)、市場性加算Ⅰ(加算率10%)を適用。条件付き承認品目のため、営業利益率は業界平均の0.5倍。
中医協 総-11-2(2026年4月8日)
希少疾病用医薬品等に係る加算(市場性加算Ⅰ)を適用し、対象患者数が極めて少ないことが確認された。先駆的医薬品指定により先駆加算が適用され、合計加算率は20%となった。
数字で見るアムシェプリ
5,531万円
1枚あたりの薬価(2026年5月収載)
+20%
補正加算合計(先駆+10% / 市場性+10%)
注:実際の患者1人あたりコストは薬剤費のみで5,531万円(高額療養費制度の適用あり)。本承認(2033年まで)が得られれば、次回算定時に薬価の見直しが行われる可能性がある。
この記事をシェア
アムシェプリの薬価データを確認する
薬価ラボで検索 →
データ分析
先発品が後発品より安い・同額の薬価逆転リスト
「薬価逆転」とは、本来より高いはずの先発品(オリジナル医薬品)の薬価が、後発品(ジェネリック)の最安値以下になっている状態を指します。後発品の普及に伴う長期収載品引き下げが繰り返された結果、一部の先発品では後発品より低い薬価になるケースが生じています。薬剤師・病院薬局の在庫選定・在庫管理の参考にご活用ください。
最終更新: 2026-04-01(2026年4月薬価改定反映)
| 薬品名 ↕ |
成分名 ↕ |
先発品薬価(円) ↕ |
後発品最安値(円) ↕ |
差額(円) ↕ |
後発品数 ↕ |
データ出典: 厚生労働省 薬価基準収載品目リスト(2026年4月適用)
この記事をシェア
← インサイト一覧に戻る
データ分析
「不採算品再算定」に繰り返し指定される薬剤の一覧と背景
2025年・2026年の2年連続で不採算品再算定が臨時・特例的に実施されました。薬価ラボのデータベースから、両年度いずれも指定を受けた72品目を抽出し、その背景にある構造的な課題と今後の政策の方向性を解説します。
最終更新: 2026年4月1日(2026年4月薬価改定反映)|データ出典: 厚生労働省 不採算品再算定対象品目一覧(R7・R8)
不採算品再算定とは
薬価改定のたびに市場実勢価格に合わせて薬価が引き下げられる中で、一部の医薬品は「薬価が著しく低額となり、製造販売業者が製造販売を継続することが困難な状態」に陥ります。こうした品目のうち保険医療上の必要性が高いものを対象に、薬価を引き上げる仕組みが「不採算品再算定」です(中医協 第111回薬価専門部会 2015年11月)。
通常の薬価改定では引き下げの対象となる品目も、不採算品再算定が適用されると例外的に引き上げが認められます。ただし適用には「成分規格が同一の類似薬がすべて対象になる」など厳格な要件があり、企業が希望しても必ずしも引き上げ幅が十分とならないケースが多くあります(中医協 第228回薬価専門部会 2024年11月)。
なぜ同じ薬が繰り返し指定されるのか
2025年・2026年と2年連続で不採算品再算定が特例的に実施されたことは異例です。中医協の議事録には、繰り返し指定されてもなお不採算状態が解消されない理由が複数指摘されています。
① 原材料費・製造コストの高止まり
「円安・物価上昇・賃金上昇など、原価が上がる要因が継続している」(第231回薬価専門部会 2024年12月)。一回の不採算品再算定では引き上げ幅が製造コストの上昇に追いつかず、翌年度も不採算状態が続く構図です。
② 後発品産業の「少量多品目」構造
後発品企業は新規品を次々と収載して収益を維持してきた結果、少量多品目の生産構造が定着しました。「安定供給に真剣に取り組む企業は不採算になっても供給を継続せざるを得ず、製造余力を持つ余裕がない」(第203回薬価専門部会 2023年7月)。増産要請が来ても対応できない悪循環に陥っています。
③ 指定要件の制約により引き上げが限定的
乖離率が平均を超える品目は対象外となるなど、適用要件により引き上げを受けられない品目も多い。再算定を受けた品目でも「企業の希望通りに薬価が引き上げられるわけではない」(第228回薬価専門部会 2024年11月)ため、翌年度も改めて申請せざるを得ない状況が生まれます。
2026年4月改定での変化——「めり張り」路線へ
2年連続の特例実施を経て、2026年改定では対象を絞る方向に転換しました。基礎的医薬品と同一成分・剤形の品目、安定確保医薬品のカテゴリーA・B品目、厚生労働大臣が増産要請を行った品目に限定して適用。また、乖離率が平均(5.2%)を超える品目は原則対象外とされました(第233回薬価専門部会 2024年12月)。
医療上の必要性が特に高い品目を優先しながらも、国民負担の観点から「安売りしておいて不採算品を申請することはあってはならない」(第243回薬価専門部会 2025年12月)という姿勢も明確にされています。
2025年・2026年の両年度で指定された品目一覧
下表は、2025年4月(R7)・2026年4月(R8)の両改定で不採算品再算定が適用された品目です。注射薬が53品目と多数を占め、次いで内用薬11品目、外用薬8品目となっています。薬品名をクリックすると、薬価ラボ内の個別ページで価格推移や後発品情報を確認できます。
| 薬品名 ↕ |
成分名 ↕ |
区分 ↕ |
製造販売業者 ↕ |
指定年度 |
指定回数 ↕ |
この一覧の活用方法
💊
薬剤師・病院薬剤師の方へ
繰り返し不採算品指定されている薬剤は、今後の供給継続リスクが高い傾向があります。在庫確保や代替薬の選定を早めに検討する際の参考として活用できます。薬品名をクリックすると、薬価推移と後発品一覧を確認できます。
🏢
製薬企業・薬事担当者の方へ
競合成分の不採算状況をモニタリングすることで、市場からの撤退動向を早期に把握できます。成分名で並べ替えると、同一成分の複数メーカー品の状況を一覧できます。
📋
医師・処方担当者の方へ
処方している薬剤がこの一覧に含まれる場合、供給不安の可能性を念頭に置き、代替薬の処方オプションを事前に確認しておくことをお勧めします。
参考資料(中医協 薬価専門部会議事録)
第111回(2015年11月11日)、第203回(2023年7月5日)、第228回(2024年11月6日)、第231回(2024年12月18日)、第232回(2024年12月20日)、第233回(2024年12月25日)、第243回(2025年12月10日)の各議事録。議事録の全文は厚生労働省の中央社会保険医療協議会のウェブサイトで公開されています。不採算品再算定対象品目一覧は厚生労働省ウェブサイト(令和7年度・令和8年度)より取得。
この記事をシェア
← インサイト一覧に戻る
データ分析
国内売上高ランキング薬の薬価推移
国内で売上高上位に位置する医薬品について、2016〜2026年の薬価改定ごとの価格推移を収録しています。毎年の薬価改定による引き下げ幅、市場拡大再算定や費用対効果評価の影響がどの時点で価格に反映されたかを確認することができます。
最終更新: 2026-04-01(2026年4月薬価改定反映)
データ出典: 厚生労働省 薬価基準収載品目リスト(2016〜2026年各改定)
この記事をシェア
← インサイト一覧に戻る
薬価の基礎
薬はなぜ値引きされるのか
——卸値・リベート・乖離率・薬価改定をつなげて理解する
「薬価は毎年下がる」と聞いてはいるけれど、なぜ下がるのか・誰がどこで値引きしているのか、説明できますか? MRや薬事担当でも意外と知らない「流通と価格の仕組み」を、お金の流れとともに整理します。
最終更新:2026年5月 | 対象読者:MR・薬事・品質管理など、薬価交渉に直接関わっていない製薬業界の方
① 薬が患者に届くまでの流れ
日本の医療用医薬品は、製造から患者の手に渡るまでに必ず「メーカー → 卸 → 病院・薬局 → 患者」という流通経路をたどります。スーパーで野菜を買うように、病院がメーカーから直接買うことはほとんどありません。
この流通構造の中で、各プレイヤーが異なる価格で薬をやり取りしていることが、薬価の複雑さの根源です。
② 薬価とは何か——公定価格の「上限」
薬価(やっか)とは、厚生労働大臣が告示する健康保険適用薬の公定価格です。病院・薬局はこの価格を上限として保険に請求します。
💡 薬価の3つの役割
- 保険請求の上限額:病院・薬局はこれ以上を保険に請求できない
- 流通価格の基準:卸・病院間の交渉は薬価を参照点として行われる
- 改定の基準:実際の取引価格との差(乖離)が改定の根拠になる
薬価と消費税の関係
薬価基準に載っている価格は税抜き(消費税別)で設定されています。病院が保険に請求するときは「薬価 × 1.10」(消費税10%分を加算)が支払われ、卸から仕入れる際も「仕入価格 + 消費税」を支払います。乖離率の計算はすべて税抜き価格ベースで行われます。
例)薬価 1,000円(税抜)の薬
・保険請求額 → 1,000円 × 1.1 = 1,100円
・卸からの仕入れ(仮に900円で交渉)→ 900円 × 1.1 = 990円(税込)
③ メーカー→卸:建値・リベート・アローアンス
メーカーは卸に薬を販売するとき、薬価より低い「建値(仕切価格)」を設定します。建値は多くの場合、薬価の90〜95%前後です。しかしこれで終わりではありません。後からさらに「リベート」や「アローアンス」が加わります。
建値(仕切価格)
メーカーが卸に提示する販売価格の出発点。薬価の90〜95%程度に設定される。卸はいったんこの価格で仕入れる。建値は公開されず、メーカーと卸の間で個別に設定される。
リベート
一定期間の取引終了後に、販売量などの実績に応じてメーカーが卸へ後払いで戻すお金。「売れれば売れるほど多く返ってくる」仕組みで、卸がメーカー品を積極的に販売する動機になっている。
アローアンス
特定の取引条件(在庫管理・期限管理・物流協力・情報提供など)を達成した場合にメーカーが卸に支払う業務協力費。リベートと合わせて「リベート・アローアンス」とまとめて呼ばれることが多い。
なぜこんな複雑な仕組みになったのか?
戦後の流通慣行として定着した構造で、メーカーが卸の販売意欲を引き出しながら、表向きの建値を高く保つための仕組みとして機能してきた歴史があります。公正取引委員会もリベートの透明化を求めており、近年は「単品単価取引」への移行も進んでいます。
④ 卸のマージンの原資を数字で理解する
「卸はどこで儲けているのか?」これは業界内でも意外と知られていません。卸のマージンは建値とリベート・アローアンスの合計から、病院への値引き分を引いた残りで成り立っています。
実際の数字で確認してみましょう。薬価1,000円の薬を例にします。
💴 薬価 1,000円の薬 — お金の流れ(税抜き)※数字はあくまで理解のための例示。実際は品目・企業・交渉力によって大きく異なります
🏭 メーカー → 🚚 卸
リベート・アローアンス(後払い)
+50円
建値の約5%相当
卸の実質仕入れコスト:
950円 − 50円 = 900円
(薬価の90%)
🚚 卸 → 🏥 病院
卸のマージン(粗利):
920円 − 900円 = 20円
(薬価の2%)
🏥 病院 → 💴 保険請求
病院の薬価差益:
1,000円 − 920円 = 80円
(薬価の8%)
ポイント:卸のマージン(2%)はリベートで成り立つ
建値950円で仕入れて920円で売ると、表向きは30円の赤字になります。それがリベート・アローアンス50円で補填され、最終的に20円の黒字(マージン)になります。つまり卸のマージンは、メーカーからのリベート・アローアンスを原資としているのです。リベートがなければ、卸は値引き交渉に応じるほど赤字になってしまいます。
⑤ 卸→病院:薬価差の発生
病院・薬局は卸から薬価より安く仕入れ、保険には薬価で請求します。この差額が「薬価差益」です。上の例では80円が薬価差益になります。
薬価差益は病院の収益の一部となっており、診療報酬だけでは賄えない運営費の補填として機能してきた歴史があります。一方で「保険財政から過剰に支払われている」という批判もあり、薬価改定による引き下げの理由のひとつでもあります。
注意:薬価差益と後発品
後発品(ジェネリック)は先発品よりさらに安く仕入れられるため、薬価差益が大きくなりやすい。これが病院にとって後発品に切り替える経済的なインセンティブのひとつとなっています。
⑥ 乖離率とは——個別品目と平均乖離率
乖離率とは、薬価と実際の取引価格(市場実勢価格)の差を薬価で割った割合です。薬価改定の幅を決める最も重要な指標です。
乖離率の計算式
乖離率(%)=
薬価 − 市場実勢価格
薬価
× 100
例)薬価1,000円・取引価格920円の場合:
(1,000 − 920)÷ 1,000 × 100 = 8.0%
個別品目の乖離率 vs 平均乖離率
個別品目の乖離率
その薬1品目の薬価と市場取引価格の差。品目によって大きく異なり、後発品は20〜40%を超えることもある。先発品は数%〜十数%程度が多い。
平均乖離率(全品目)
毎年10月の薬価調査で全取引を集計し、全収載品目の加重平均として厚生労働省が算出・公表する。薬価改定の基準となる最重要指標。
平均乖離率が縮小傾向にある背景には、複数の要因が絡み合っています。主なものとして、①2021年度から毎年改定が実施され1年以上乖離が蓄積されにくくなったこと、②後発品メーカーの供給不安が相次ぎ卸・病院が強い値引き要求を控える場面が増えたこと、③単品単価取引の普及により品目ごとの価格が可視化されやすくなったこと、が挙げられます。ただし要因の寄与度については専門家の間でも議論があり、一概に断言できない部分もあります。中間年改定(奇数年)では「平均乖離率の一定倍(直近は0.625〜0.75倍)」を超える品目のみが対象となります。
⑦ 薬価改定:乖離率から改定まで
毎年の薬価改定は、次のサイクルで動いています。
10月:薬価調査
卸が全取引について「いくらで売ったか」を国に報告。全品目の実際の取引価格が集計される。
12月〜翌1月:乖離率の算出・中医協審議
品目ごとの乖離率が算出され、中医協 薬価専門部会で改定幅を議論。不採算品の扱い・イノベーション評価なども同時に審議される。
2〜3月:告示
厚生労働大臣が新しい薬価を官報に告示。製薬企業・卸・病院はこの時点で翌年4月の価格を把握する。
4月:新薬価適用
新しい薬価で保険請求・取引が始まる。乖離率が高かった品目ほど大きく引き下げられ、翌年の乖離が小さくなる——これを毎年繰り返すことで、薬価は構造的に下がり続ける。
なぜ薬価は下がり続けるのか
薬価改定は基本的に「乖離の縮小」を目的としているため、実際の取引価格が薬価を下回っている限り、改定のたびに薬価は下がります。薬価が下がれば卸・病院は再び安く仕入れようとするため、翌年また乖離が生じ、また改定で引き下げられる——というサイクルが続きます。
まとめ——登場人物と価格の関係
| プレイヤー |
買う価格 |
売る価格 |
利益の原資 |
| 製薬メーカー |
製造原価 |
建値(薬価の90〜95%) |
薬価と製造原価の差 |
| 医薬品卸 |
建値(950円) |
納入価(920円) |
リベート・アローアンス(50円)が主な原資 |
| 病院・薬局 |
納入価(920円) |
薬価(1,000円)で保険請求 |
薬価差益(80円) |
この差が乖離率(8%)として毎年測定され、薬価改定で縮小されます。改定後は薬価が920円に近づき、また翌年に新たな乖離が生まれる——これが「薬価が下がり続ける」仕組みの正体です。
薬価ラボで実際の薬価を調べる
この記事で解説した「薬価」「改定履歴」を実際の薬剤で確認できます。薬品名や成分名で検索してみてください。
薬価を調べる →
🗓 薬価改定 年間スケジュール
薬価改定・後発品収載・診療報酬改定など、製薬BD・薬剤師が押さえるべき年間イベントを網羅しています。
薬価改定
後発品・新薬収載
診療報酬改定
中医協プロセス
経過措置
📋 申請締め切りについて
後発品の薬価収載(6月・12月)には、製造販売承認取得後に薬価申請が必要です。
申請締め切りの目安は収載月の
約2〜3ヶ月前(6月収載 → 2〜3月頃、12月収載 → 8〜9月頃)ですが、
毎年厚生労働省から正式な公募通知が発出されます。実際の締め切りは必ず厚労省の通知で確認してください。
厚生労働省 薬価基準収載品目リスト(公式)→
2027年度は予定。出典:厚生労働省 中医協資料。