2027年度薬価改定の対象範囲はどう決まるか。過去3回の中間年改定を一覧で(薬価専門部会 10月7日資料)
2026年10月7日の第249回薬価専門部会の議題は「令和9年度薬価改定について」で、資料は事務局の「令和9年度薬価改定について②(新薬)」の1本です。7月8日の第247回に続く2回目の事務局資料で、8月26日の業界ヒアリングをはさんでいます。この記事は開催当日に公表された資料に基づく速報です。議事録はこの記事の公開時点で未公開なので、委員の発言には触れていません。
資料が示す論点は1文です。「令和9年度薬価改定における改定の対象品目の範囲、薬価改定基準の適用ルールを検討するにあたり、創薬イノベーションの推進や国民負担の軽減等への考慮をどのように考えるか」。前提として、骨太方針2026の「経済・物価動向等の影響を受ける市場実勢価格を薬価調査等により的確に把握した上で、創薬イノベーション、医薬品の安定供給と国民負担の軽減の観点から、2027年度薬価改定を実施する」という文言と、2025年12月24日の大臣折衝事項(令和9年度改定を着実に実施し、対象範囲と各種ルールの在り方は3つの要請にバランス良く対応する考え方で検討する)が引かれています。
資料の大半は、この論点を考えるための材料です。読みどころは3つで、過去3回の中間年改定で改定対象になった品目の割合が区分ごとにどう動いたか、実勢価と連動しないルールのうち何が中間年に適用されてきたか、革新的新薬薬価維持制度がいまどれだけの品目に効いているか、です。
① 過去3回の中間年改定で、対象はどう決まったか
| 改定 | 対象の基準 | 改定の影響額 | 対象品目数(全体に占める割合) |
|---|---|---|---|
| 2021年度(令和3年度) | 平均乖離率8.0%の0.625倍(乖離率5.0%)を超える品目。新型コロナ特例として削減幅を0.8%分緩和 | ▲4,300億円 | 12,180品目(69%) |
| 2023年度(令和5年度) | 平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目。不採算品再算定を臨時・特例で全品対象、新薬創出等加算を臨時・特例で増額 | ▲3,100億円 | 13,400品目(69%) |
| 2025年度(令和7年度) | 平均乖離率5.2%を基準に、品目の性格別に設定。新薬創出等加算の対象品・後発品・その他は1.0倍、それ以外の新薬は0.75倍、長期収載品は0.5倍を超える品目 | ▲2,466億円 | 9,320品目(53%) |
影響額は各年度の予算ベース、品目数は概数です。2025年度に「品目の性格別」の設定に変わったことで、どの区分がどれだけ改定の対象になったかは大きく動きました。
| 区分 | 2021年度 | 2023年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|
| 新薬のうち新薬創出等加算の対象品 | 40% | 41% | 9% |
| 新薬(2025年度は加算対象品以外の新薬) | 59% | 63% | 55% |
| 長期収載品 | 88% | 89% | 88% |
| 後発品 | 83% | 82% | 66% |
| その他(昭和42年以前収載) | 31% | 36% | 20% |
新薬創出等加算の対象品は、2021・2023年度は4割が改定対象でしたが、2025年度は基準が平均乖離率の1.0倍で、対象は9%でした。長期収載品は3回とも9割近くが対象です。資料は、この区分ごとの基準(平均乖離率の何倍か)を示したうえで、対象範囲と適用ルールをどう考えるかを論点にしています。
② 中間年に、どのルールが適用されてきたか
事務局は既収載品の算定ルールを「実勢価改定と連動するもの」と「連動しないもの」に分け、過去3回の中間年でどれを適用したかを一覧にしています。
| ルール | 価格への影響 | 2021年度 | 2023年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|---|
| 最低薬価の維持 | 引き上げ | ○ | ○ | ○(最低薬価を引き上げ) |
| 基礎的医薬品の薬価維持 | 引き上げ | ○ | ○ | ○ |
| 革新的新薬薬価維持制度(2025年度までは新薬創出等加算) | 引き上げ | ○ | ○ | ○ |
| 後発品の価格帯集約 | 引き下げ | ○ | ○ | ○ |
| 追加承認品目等の加算 | 引き上げ | × | × | 臨時 |
| 革新的新薬薬価維持制度の累積額控除 | 引き下げ | × | × | ○ |
| 不採算品再算定 | 引き上げ | × | 臨時・特例 | 臨時・特例 |
| 市場拡大再算定・持続可能性特例価格調整 | 引き下げ | × | × | × |
| 効能変化再算定 | 引き下げ | × | × | × |
| 用法用量変化再算定 | 引き下げ | × | × | × |
| 長期収載品の薬価改定 | 引き下げ | × | × | × |
| 収載後の外国平均価格調整 | 引き下げ/引き上げ | × | ○ | ○ |
| 革新的新薬薬価維持制度対象品目を比較薬にした品目の控除 | 引き下げ | × | × | ○ |
上の4つが「連動する」ルール、それ以外が「連動しない」ルールです。資料には、この一覧は2026年度薬価制度改革を踏まえたもので、当時のルールとは一部異なるという注記があります。
並べると、実勢価と連動しないルールのうち、市場拡大再算定、効能変化・用法用量変化再算定、長期収載品の薬価改定は3回とも適用されていません。連動しないルールで中間年に適用されたのは、引き上げ方向の不採算品再算定(臨時・特例)と追加承認品目等の加算(2025年度に臨時)、2023年度以降の収載後の外国平均価格調整、そして2025年度の累積額控除と、制度対象品目を比較薬にした品目の控除です。業界4団体が第248回で求めた「特許期間中の新薬の引き下げルールの凍結」との関係で見ると、2025年度には累積額控除、比較薬にした品目の控除、外国平均価格調整による引き下げ(1成分1品目)が適用されていて、引き下げ方向のルールが全く適用されなかったわけではありません。
③ 革新的新薬薬価維持制度は、いまどれだけの品目に効いているか
2026年度改定で薬価が維持された品目は383成分653品目(98社)で、新薬全体(収載から15年以内で後発品のない品目)に占める割合は48.4%です。乖離率の要件などで維持されなかった75品目を含めた制度対象品目で見ると54.0%になります。維持された品目は2025年度の372成分605品目(46.7%)から増えています。要件別に多いのは希少疾病用医薬品の210成分334品目と、加算適用品の113成分214品目です。一方、対象でありながら薬価が維持されなかった品目が49成分75品目あります。乖離率の要件に当たったものと、市場拡大再算定等で引き下げられたものです。
制度には出口もあります。後発品が収載されたとき、または収載から15年たったときに、それまで維持してきた累積額を控除します。2026年度の控除は28成分49品目で918億円、2025年度は21成分46品目で562億円でした。対象品目を比較薬にして算定された品目の控除も2026年度に4成分7品目・76億円あります。
薬価ラボは、2026年4月改定の公式リストを各薬品ページのバッジ(旧称の「新薬創出加算」の表記のまま)と年度別の表に反映しています。薬価ラボのデータベースで数えると、2026年4月の維持が653品目、非維持が75品目、累積額控除が49品目で、資料の品目数と一致します。自社品や競合品がどの区分かは薬品ページで確認できます。
④ 収載時・改定時の加算はどれだけ付いているか
資料は収載時と改定時の加算の実績を種類ごとに載せています。期間が項目ごとに違うので、表では期間を添えています。
| 加算・調整 | 期間 | 実績 |
|---|---|---|
| 有用性加算(収載時) | 2023〜2026年度(8月収載分まで)の新医薬品191成分 | 102成分(約5割) |
| 画期性加算(収載時) | 同上 | 2024年度・2025年度に1成分ずつ(いずれも75%) |
| 市場性加算(Ⅰ)(Ⅱ)(収載時) | 2026年度収載分 | 16成分24品目。うち3成分は(Ⅰ)に当たるが、2026年度改革の例外(希少疾病用医薬品の指定基準への該当性の内容に応じて5%)を適用 |
| 小児加算(収載時) | 2026年度収載分 | 7成分13品目 |
| 迅速導入加算(収載時) | 2026年度収載分 | 2成分2品目 |
| 小児の効能追加(改定時) | 2026年度改定 | 5成分10品目 |
| 希少疾病の効能追加(改定時) | 2026年度改定 | 3成分4品目 |
| 迅速導入による効能追加(改定時) | 2026年度改定 | 2成分3品目 |
| 真の臨床的有用性(改定時) | 2026年度改定 | 2成分5品目 |
| 市販後に国内の標準的治療法となった既収載品(改定時・2026年度改革で新設) | 2026年度改定 | 1例。ビロイ点滴静注用(ゾルベツキシマブ)にA=5% |
| 外国平均価格調整(収載時) | 2026年度収載分 | 引き上げ1成分2品目、引き下げ0 |
| 外国平均価格調整の引き上げ(改定時・2024年度改革で新設) | 2025年度・2026年度改定 | 2025年度5成分7品目、2026年度2成分2品目 |
⑤ 長期収載品と市場拡大再算定
長期収載品は、2026年度改革でG1の適用時期が後発品上市後10年から5年に前倒しされ、置換え率によらず引き下げペースの速いG1に一本化されました。市場拡大再算定は、類似品への適用(いわゆる共連れ)が2026年度改革で廃止され、薬理作用類似薬についてはNDBで使用量を把握して、薬価改定以外の機会も含めて自品の販売額で判定する仕組みに変わっています。
実績としては、2018年度改定から2026年度の四半期再算定(5月告示分)までに、市場拡大再算定の対象は改定時84成分178品目、四半期38成分85品目の合計122成分263品目です。このうち類似品として引き下げられたのは40成分79品目でした。上の一覧のとおり、中間年にはどちらも適用されていません。
⑥ 次の節目と、薬価ラボで確かめられること
次は、2026年度薬価調査の結果(平均乖離率)です。資料にある推移では、2024年度調査が5.2%、2025年度調査が4.8%で、1993年度以降で最も低い水準です。過去3回の中間年改定では、対象範囲の基準(平均乖離率の何倍か)と適用ルールは、いずれも12月の骨子で固まっています(2020年12月18日・2022年12月21日・2024年12月25日の中医協了解)。第248回で業界4団体が求めたことは議事録のまとめに整理しています。
2025年度改定で自社品がどの基準で改定されたかは、各薬品ページの「薬価改定の理由」に、中間年の対象範囲の判定とあわせて出しています。改定ごとの品目数と価格の動きは2025年4月改定のアーカイブで見られます。
⑦ 出典(一次資料)
- 中医協 薬価専門部会(第249回)議事次第・資料(厚生労働省)
- 議事次第
- 薬-1 令和9年度薬価改定について②(新薬)
- 薬価ラボの品目数は、2026年4月改定の公式リスト(維持・非維持・累積額控除)を取り込んだ薬価ラボのデータベースを2026年10月21日時点で集計
※本記事は開催当日に公表された資料に基づく速報です。議事録は後日公開されるため、質疑・発言を踏まえた詳報は議事録公開後の「まとめ」であらためてお届けします。